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メタップスのレビュー報告書(監査報告書)の提出が遅延した会計監査人であるPwcあらた監査法人に付した「その他の事項」をガチ検証してみるう!

こんにちは!「投資としての仮想通貨」管理人のなおです!

今日は引き続きメタップスの決算関連についてエントリーしてみます。

メタップスの決算発表が遅れた理由は、監査法人による監査が期限通りに終わらずに、ICOの会計処理、とりわけIFRS(国際財務報告基準)*1におけるICOの発行体における会計処理についての追加の監査手続が必要となったことにあります。

そして、その追加手続において、どのようなことを実施したのか、などはレビュー報告書を見れば、なんとなくわかります。

今日は、レビュー報告書*2をもとにして、メタップスの会計監査人であるPwcあらた監査法人がどのような判断をしたのか、について解説してみたいと思います。

PwCあらた監査法人_ロゴ

なんとなく、投資とかけ離れている感じもしますが笑、とはいえ、真の投資家になるためには、会計監査人の監査報告書(今回のメタップスは四半期ですので四半期レビュー報告書となりますが)にどのようなことが記載されているのかについては把握すべきです。

というのも、実はこの監査報告書*3に定型分以外の文言を入れるのは、なかなか大変でして、入れるための法人内手続はまあまあ大変なわけです。

それにも拘らず、報告書に文言を追加するということは、監査をした結果として外部の人にこれは伝えないとあかんやろっていう事象があるってことなんですよね。

ですので、監査報告書をみて強調事項その他の事項というのがある場合は読んでおいたほうが良いです!

それでは行ってみましょう!!!

おさらい!メタップスICOに関するIFRS上の会計処理!!

まずは自分のブログで恐縮ですが、これを読んで、どのような会計処理をしたのかについて把握してください!

その上で、会計監査人がどのような判断をしたのかを検討してみたいと思います。

なお、メタップスのレビュー報告書自体は、

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=2648764

でみることができます!

監査手続遂行上の困難性についての注意喚起

まずはその他の事項*4に記載されている最初の事柄です。

メタップス_監査報告書_①

まず、仮想通貨取引に対応する監査手続については、国際的にも、日本国内でも明文化されたものがないということを記載しています。

次に、監査の仕方が固まってはいないけども、財務諸表に与えるインパクト自体はそこまでではないので、レビュー報告書を公表するために必要な証拠は集まったよ!ということを表現しています*5

さらに、現在よりも仮想通貨の取引が増加したり、複雑化すると監査意見を表明するための根拠を集めるのが難しくなる可能性があるということを記載しています。

個人的には、この箇所が少し気になりました。

というのも、取引が如何に複雑になったからといって、そのことのみを理由にして、監査意見を表明することができない、ということは、監査人の気持ちとしては理解できますが、投資家のために監査を実施する公認会計士としての仕事を放棄しているとも言えるからです。

もちろん、そういうことを意図して記載したものではないでしょうし、あくまでもそういうようなことが起きてしまう可能性についての注意喚起であるとは思いますが、あまりこういうことを記載する監査報告書はみたことがないので、少し驚きました。

あくまでも一般論ですが、会計士は会計や監査についての知見のみを集めるだけではなく、ビジネスの変化についても追いついていかないと、適切な監査が実施できない時代になりつつあると思います。
こういう議論は昔からよく言われていたとは聞きますが、昔のビジネス以上に、今は複雑化していますし、現物があるようなビジネスからネットのように現物がないビジネスへと大きく変化が生じている現在では、ビジネスの知見をしっかりと理解するようになって欲しいものです。

とりわけ、ネットやwebの知識、ブロックチェーンなどの知見は今後監査をする上でも必須になるわけですので、もう少し頑張って欲しいなあ。

監査をする会計士にとっての必須の知識としては、ブロックチェーン技術の未解決問題は必読の書でしょう。

こういう知見を有している人が監査側のみならず、例えば、MS-Japanなどを使って事業会社に転職することで、IT系の会社が健全に発展してくことがこれからの日本社会にとってはとても重要なことです。

タップスが仮想通貨を所有していることを外部者が客観的に確認する方法が確立されていないことに関する注意喚起

次は、仮想通貨の残高をどのように検証するか問題です。

メタップス_監査報告書_②

その他の事項の二つ目

最初のパラグラフではブロックチェーンについての基礎的なことが記載されています。

仮想通貨の取引をしている人であれば、なんとなく知っているような事項がつらつらと記載されています。

具体的には公開鍵と秘密鍵の性質などの説明がなされています。それらについては、共通鍵暗号と公開鍵暗号の違い | 基礎から学ぶSSL入門ガイド | CSP SSLなどがわかりやすいかもしれません。

公開鍵は南京錠で、秘密鍵が南京錠を開けるための鍵、みたいな説明がなされていて、ほおおと思いました。

しかし、ここからが少し違和感がある記載になっています。

会社は監査人に対して、秘密鍵を開示して、その秘密鍵を使うことで、仮想通貨のトランザクションを実行し再実施をしたものと思われますが、その提示された秘密鍵が実際に会社のものかどうなのかは立証しようがないと言っています。

代替案としては最初に秘密鍵を生成する段階でなんらかの方法で会社がその秘密鍵を生成したのだということを立証できる方法を確立する必要がある、としています。

おそらく、これは、秘密鍵を生成する際の画面の動画をとっておく、などが考えられると思います。

ただ、秘密鍵の開示自体は基本的には絶対にしたくないことの一つでしょう。

実際、コインチェック秘密鍵の情報を取られたので、580億ものNEM喪失につながっているわけですし。

そこまでして会社が嘘をついてるというリスクはあまりないと思いますね。

なのでこの箇所は少し監査人の方が保守的になっている気もします。

ただ、今までの監査論的な発想の枠組みの中で立証するとしたら、このような結論になってしまうのも理解はできます。

仮想通貨やブロックチェーンなど今まで以上にネットの世界のインパクトがリアルワールドに与える影響が大きくなるような時代において、リアルな在庫があったり、金型を使ってガチャンガチャンと何かを製造するような会社を前提とした監査論では対応できなくなってきています。

ビジネス自体に変化があれば監査手法についても変化があってしかるべき。

ここではそんな感想を持ちました。

タップス保有していると主張する仮想通貨残高を検証するためのツール自体にも限界が存在し、そのことに起因した監査上の問題点についての注意喚起

3番目は仮想通貨残高を検証するためのツールに内在する限界について記載しています。

メタップス_監査報告書_③
その他の事項の三つ目

最初のパラグラフでは、仮想通貨の取引の履歴をオープンツールを用いて、実施したという記載があります。

そして、このオープンツールはネット上で公開されているソースコードに基づくものであって、一般的には信頼できるものではあるが、監査論的には利用するツールなどが監査に耐えうるものなのかを評価しなければならないという論点があることを述べています。

そのため、監査において利用して良いのかという評価を行った上で監査に利用しなければならないが、その評価には一定の限界があり、会社が独自に作成しているツールが完成すれば、そっちの方が監査で利用できる可能性が高い、ということを主張しています。

これも監査論的には結構トピックスでして、例えば、在庫の年齢表などに基づいて在庫の評価を行う際にはその在庫の年齢表が正確に作成されているかどうかを評価することが求められています。これと同様に、オープンツール自体に何か問題あった場合は、そのツールを利用した結果も異なるわけなので、オープンツールがちゃんとしているかを確かめましょうということを言ってますね。

なので、会社には期末までに頑張ってもらって、このツールを早く作成してください!というようなプレッシャーを与える文言となっています笑。

仮想通貨に関する監査の方法についてコンセンサスが世界的に取れた場合はそれに従うし、そうすると監査手続も変わるよっていう注意喚起

最後はこれで終わっています。

メタップス_監査報告書_④
その他の事項の四つ目

一見するとそれほど重要なことではないように思えるかもしれません。

文章自体も短いですしね笑。

ただし、なおはこの文章が一番やばいなと思いました。

というのも、実施する手続きが変化するということは、その結果も変わることがあるからです。

そうすると、現時点では正しいとされている取引が、将来のどこかの時点、つまり仮想通貨に関する監査手続について世界的にコンセンサスが取れた時点で、監査手法が代わり、結果として正しくないとされてしなう可能性がある、ということを示唆しています。

最悪、遡求修正*6する可能性も暗に示しているような気がしました。

サマリー

ざっくり言ってしまえば

仮想通貨の取引は複雑だから、監査の仕方わからんかった。

しかもブロックチェーン秘密鍵とか、まじメタップスのものかどうかもわからんかったしな。

でも、まあ、そこまで財務諸表全体に与える影響は大きくないとも言えそうだから、まあいっかな。

あ!でも、利用したツールはちょっとどうなのかとも思うので、ちゃんとしたツールをメタップスさん作ってね!

あと、監査の仕方が世界的に決まったら、それに従うからね!

って感じです笑。

参考になりましたかね??笑

これ読んで、やっぱり監査業界から経理業界へ転職したいと感じた人はMS-Japanとかを参考にしてみてください笑

あとは、会計業界ではなく、思い切って、ネットワークエンジニア とかになるのはいかがでしょうか笑

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*1:すごい細かいですが、会計士的には国際会計基準国際財務報告基準は違うと言いたいです笑。従来はIFRSではなくIASすなわち、International Acconuting Standardでしたが、これを改定してIFRSすなわちInternational Finacial ReportingStandardへと名称を変更しました。これはIFRSの根底に会計ではなく財務報告であることを明確にしたかったことにあります。財務報告と会計で何が違うのか?それこそ大きな論点になるくらい議論できますがここでは、導入前に知っておくべき IFRSと包括利益の考え方を紹介するにとどめます。この本では、IFRSでは複式簿記の原則から脱却することすら想定していると主張しています。時価評価するということはつまり期末における資産と負債をそれぞれDCFによって毎回測定し直すことです。これによって資産と負債の金額を確定することができれば、差額としての利益や純資産も定義することも可能であるとして、複式簿記から離脱することが大きな野望であるとしています。もっとも、この本が書かれた当初はIFRSでは時価評価をどんどん進めていこうという考えの人が権力を持っていたので、こういう発想になっていましたが、現在のIASBでは若干そのようなトーンからは乖離しつつあるようです。というのも、今の発想だと純利益というようなものはなくなってしまうんですよね。純利益とは純資産の増価額のうち資本取引以外の理由で増加したもののうち、実現したものである、という定義だったのですが、資産と負債をDCFで求めた結果としての純資産額では純利益は原理的いは計算されないことになってしまいます。現在のIASBはそのような乱暴な議論はしなくなっており、純利益に対しても一定の配慮がされるようになりました。

*2:レビュー報告書は、四半期決算における決算数値を監査法人がレビューと呼ばれる期末監査よりは簡易的に実施した手続によって、その妥当性を概ね問題ないよね、と認めた時に発行する証明書みたいなものです。厳密にいうと、証明書ではないですし、問題ないとも言ってないですが、これくらいに考えておけばここではオッケーでしょう。

*3:ちなみに監査報告書の読み方についてはこれがオススメですhttp://amzn.to/2EFOuqZ

*4:監査基準委員会報告書706 独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分 7項 監査人は、財務諸表に表示又は開示されていない事項について、監査、監査人の 責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連するため監査報告書において 説明する必要があると判断した場合、「その他の事項」又は他の適切な見出しを付 した区分を設けて、当該事項を記載しなければならない。

*5:ちょっと、ここで思ったのですが、そもそも金額全体のインパクトに重要性がないということであれば、追加手続を実施して、決算発表を遅らせるという決断自体も少し勇み足だったのでないかっていう指摘があっても然るべきかなとおも思いました。

*6:過去に発表した決算が誤りだとして、過去に遡って修正をすること。かつてはこのような処理はせずに、誤りが発見された会計期間の特別損益として処理していましたが、今の会計処理ではこのような対応はせずにあくまでも過去の誤りなのだから、過去を訂正すると言った感じで処理を行います。タイムリープして、やり直すって感じでしょうね。