こんにちは、「投資としての仮想通貨」管理人のなおです!
今回は、メタップスのICOの会計処理について、再度エントリーしてみます。
というのも、2月14日にリリースされたIRでは、少しICOの会計処理が変わったんですよ笑。
おそらくは監査法人による本件の対応の方向性が示されたことによるものだと思いますが、こういうことが起きてしまうこと自体がICOに関する会計処理などの制度面での対応が遅れているということによるものでしょうね。
今回のエントリーの前にまずは前回の復習をしましょう!
以下のエントリーを読んでいただけるとありがたいです。
参考①:

参考②:

それでは、新しいメタップスの仮想通貨関連の会計処理(ICOの会計処理)について、みてみましょう。
まずは差分をとる


まずは、変更前後の差分をとってみましょう!
(1)期末における保有する仮想通貨の評価に関する会計処理についての差分
変更前:
①自社保有分
②coinroom保有分
③顧客からの預かり分
を類型分けをしておらず、まとめて、「公正価値評価は行わず、取得原価をもって無形資産として計上」するとなっていました。
変更後:
①自社保有分
→「公正価値評価は行わず、取得原価をもって無形資産として計上」
②coinroom保有分
→「棚卸資産として計上し、四半期決算ごとに公正価値評価を行い評価差額については損益として認識する」
③顧客からの預かり分
→「棚卸資産として計上し、四半期末時点で公正価値評価を行い、同額を流動負債その他に計上する」
という感じになっています。
ここで、自社保有分というのは、開示資料から全てがわかるわけではないのですが、韓国の子会社であるメタップスプラスが行ったICOで発行した「PlusCoin/プラスコイン(PLC)」のうち、一定分を親会社であるメタップスが保有することになったものと思われます。
要は子会社が発行したコインを親会社が保有している分ということです。
そして、このコインは、メタップスグループが管理しているcoinroomで上場しています。
上場している以上、プラスコインにも公正価値はあるはずです。
しかし、この自社保有分については、今回の会計処理では、公正価値評価の対象とはしないようです。
それは、あくまでも、「無形資産」であるため、無形資産のアップサイドリスクについては損益として認識しないというIFRSやそれ以外の会計基準に共通の考え方に従ったものなのでしょう*1。
あるいは、グループの子会社が発行したコインについては、ある種、自己株式と同様のものと考えて、公正価値評価をしない、というロジックかもしれません。
もちろん、これはequity tokenであれば、このロジックでも成立すると思われますが、おそらくメタップスの子会社が発行したトークンはutility tokenと思われますので、自己株式としての理屈付けは少し厳しいかもしれません。
utility token、equity tokenについては、以下を参考に!
http://www.daico-invest.com/entry/2018/02/12/184851
tokenの分類とりわけICO時のトークンの種類は大きく二つに分類されるよ!〜utility tokenとequity tokenの区分問題〜
次にcoinroom保有分について考えてみましょうか。
coinroom保有分については、将来顧客に販売する予定である仮想通貨であると言えます。
そのため、無形資産ではなく、棚卸資産として識別するのが正しいと判断したのでしょう。
さらに、顧客からの預かり分については、BS上両建ての処理となっています。
これは、顧客からの求めがあった場合は顧客に対して、仮想通貨を受け渡す義務が存在するために負債として計上されるのでしょう。
基本的には違和感のない会計処理ですが、さらに検証を加えてみたいと思います!
*1:もちろん、IFRS上で固定資産の再評価モデルを採用した場合はこの限りではないでしょう。ただしその場合も再評価された差分のうち、評価益の場合はその他の包括利益として認識されます。評価減の場合は損益にチャージされます