ICO

仮想通貨の会計処理(ICOの会計処理)について書いてみるよ!投資とは直接関係ないけどちょっと詳しいので!

こんにちは、「dApps CryptoAsset Valuation」管理人のなおです!

ICOの会計処理について検討してみたいと思います。
ICOの会計処理はまだ会計基準自体も整備されていない状況です。
そして、様々なブログなどで紹介や解説されている仮想通貨関連の会計処理は、メタップスの会計処理の説明であり、そもそものICO全般の会計処理については記載していないことが多いです。

かくいう、なおもメタップスの記事を中心に書いています笑。

しかし、すでに行われている会計処理の説明をするだけでは、専門家としては失格だと思うんですよね。

なので、ICOの会計処理について、ここで改めてリライトしてみようかなと思います。

実は、なおは会計処理については、詳しい立場にあるんですよ!

ですので、ここでは、先日、四半期報告書*1の提出期限の延期を金融庁に申請したメタップス社のICO*2について、解説してみたいと思います!!

最先端すぎて、うまくできるか自信ないですけど、できるかぎりやってみます。

ちなみに、会計に携わる人材は不足気味ですので、少しでも会計に関連する仕事をしている人は、例えば、MS-Japan とかで自分の市場での評価を一度見てみると良いかもしれないです。

ICOって何?

まずはICOについて簡単に説明することから始めるのが良いでしょうかね。

ICOについてはまたどこかでしっかりと書きたいと思っていますので、ここでは簡単な記載にとどめますね。

というか、他の人の文章を参照した方が早いな笑

以下なんかがわかりやすいと思います。

www.enigma.co.jp

すごいざっくりと言ってしまえば、仮想通貨を発行するので、ホワイトペーパー*3読んで内容よかったり、イケてると思えるなら、イーサリアム*4とか投資してちょうだいよ!っていうものです。

ICOをすると企業(別に個人でもいいけど、ここでは企業とします)に仮想通貨が流入してきます。

その仮想通貨を使って、事前に公表していたホワイトペーパーの内容を達成するように、企業はシコシコといろんなことをするわけです。営業したり、エンジニアさんがコードをひたすら書いたりなどなどです。

メタップスの会計処理ってどんなのだったの?

メタップスのICOの会計処理については、メタップスが公表している資料を見るとわかります。

<メタップス社の動向>

  • メタップスは子会社である Metaps Plus という会社を保有している
  • で、“CoinRoom”という仮想通貨取引所*5の設立を予定してるけど、仮に所定の期日までに“CoinRoom”が設立されなかった場合、調達された仮想通貨はICO参加者の希望に応じて返還される条項があった
  • つまり、Metaps Plus に流入してきた仮想通貨は将来において、返還する可能性があった
  • なので、“CoinRoom”の設立までの会計処理として、非流動資産(無形資産)及 び流動負債(預り金)に計上することにした
  • けど、2017 年 11 月 11 日に無事に“CoinRoon”設立がなされた
  • そうすると、ICOで調達された仮想通貨の返済義務は消滅した

上記を前提として、メタップスでは、2018年8月期 第1四半期決算説明資料において、以下のPPT資料で仮想通貨に関する会計処理について、取りまとめを行なっています。

以下では、メタップス社が実際に処理したと説明した内容を下に、検討を加えてみたいと思います。

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①期末における保有する仮想通貨の評価に関する会計処理について

(1)メタップスの処理

当社は、イーサリアム(ETH)をはじめとする様々な仮想通貨を保有していますが、四半期末時点での公正価値評価は行わず、取得原価をもって無形資産としてバランスシートに簿価計上しています。今後、売却のタイミングで簿価との差額を損益計上する予 定です。

(2)なおの検討

まず、疑問に思うのは、「公正価値評価は行わず」というところです。

基本的に、IFRS(国際会計基準、もしくは国際財務報告基準)では、公正価値評価を行うことが原則です。公正価値で評価できるものは全てする!みたいな基準なのに、ここでは公正価値評価をしていないのはなんでだろうと疑問が湧きます。

これに対するアンサーはおそらく以下のようなものとなるはずです。

参考になるのは「Digital currency – A case for standard setting activity. A perspective by the Australian Accounting Standards Board (AASB)」です。

これはオーストラリアの会計基準設定主体がリリースしたIFRS上における仮想通貨に関する会計処理について整理したものです。

ここでは、仮想通貨がIFRS上でどのような資産として識別されるのかについて検討を加えています。

検討に上げられているのは、①現金預金、②金融商品、③無形資産、④棚卸資産の4つ。

順番に検討を加えて、中央銀行が発行していない点と広く交換手段として受け入れられている訳ではないために①現金預金ではなく、また、一方の当事者にとって金融資産となり、他方の当事者にとって金融負債となる契約上の関係がないことから②金融商品については、該当しないという結論としています。

そうすると、残るのは、③無形資産と④棚卸資産です。

まず、③無形資産。

同資料では、物理的な実態のない非貨幣性資産であるとして、IAS39号の無形資産の定義を満たすとしています。つまり、仮想通貨はIFRS上においては、無形資産として識別される余地があるということになります。

次に、④棚卸資産。

同資料では、IAS2号のスコープに含めることができるとしています。ただし、仮想通貨の保有者が、コモディティブローカートレーダーに該当するかどうかが明確ではないとも指摘しています。

ちなみにIAS2号とはIFRSの中で棚卸資産を取り扱っている基準書です。

ここまでの議論をまとめましょう。

IFRSでは、仮想通貨は、無形資産あるいは棚卸資産として識別することが可能である。

もっとも、同資料では、現状のIFRS上の処理をそのまま当てはめると、財務諸表利用者とって有用な情報を提供することは厳しいとしています。

それは、無形資産および棚卸資産のどちらで認識したとしても、仮想通貨の保有に伴うアップサイドリスクをPLに計上することができないためです。

どういうことでしょうか。順を追って解説してきます。

ます、仮想通貨を無形資産として識別した場合です。

無形資産として識別された資産は、その資産の評価をどのように行うかについて二種類の方法があります。一つは、再評価モデルであり、もう一つは原価モデルです。

前者は毎期末ごとに公正価値にて測定し、帳簿価額と公正価値の差分を認識することまでは実施しますが、その差分は純利益とはならず、OCIとなります。他方で、後者はそもそも帳簿価額と公正価値の差分を認識することすらせずに、帳簿価額でずっと計上されます。

この結果として、無形資産として認識された仮想通貨については、ダウンサイドリスクについては減損会計の適用により認識されることはあるがアップサイドリスクについては全く認識されることはない、ということになります。

次に、仮想通貨を棚卸資産として識別した場合です。

この場合は、いわゆる低価法が採用されることになります。

低価法とは、ダウンサイドリスクについてPLで認識する方法といえるでしょう。

つまり、帳簿価額よりも公正価値の方が小さい場合にその差分をPLに計上する方法です。

この場合アップサイドリスクについては何も識別されません。

上記をまとめると、仮想通貨は現行のIFRS上では、無形資産あるいは棚卸資産として識別されるが、仮想通貨の保有に伴うダウンサイドリスクについてはPLに計上されることはあってもアップサイドリスクについてはPLに計上されることはない、という結論となります。

アップサイドリスクに関しては取り込めないのに、ダウンサイドリスクは取り込む必要があるのだとすると、会社としては不利な会計処理となってしまうため、メタップスではおそらく、無形資産として識別した上で、原価モデルを採用したのだと思われます。

ここまでの理路を理解すると、メタップス社の「四半期末時点での公正価値評価は行わず、取得原価をもって無形資産としてバランスシートに簿価計上しています。」というをなぜ行ったかという理由がわかると思います。

紙面の関係上で今日は、

期末における保有する仮想通貨の評価に関する会計処理について

のみの解説となりました。

次回以降で残りについても解説したいと思います!!

IFRSを勉強するための良い書籍ってなに?

なお、IFRSを初めて勉強したい人は、エッセンシャルIFRS がオススメです。

また、もう少し本格的に勉強したい人は、IFRSの本質 第I巻: 的確な実務判断を可能にする およびIFRSの本質 第II巻: 的確な実務判断を可能にする 

などがオススメです。

さらに、もっと極めたい!という方はやはり基準書を一読してみてください。

*1:金融商品取引法に規定されている上場会社が四半期ごとに金融庁へ提出が求められている書類のこと。概ね決算短信に記載されている内容と同じです。もっと初心者の人にわかりやすく言えば、三ヶ月ごとの儲け額がさ記された真面目な書類のこと。

*2:initial coin offering:IPOに倣って仮想通貨を発行して広く資金を調達することをこう呼びます。本ブログでもどこかで特集します!

*3:目論見書みたいなもの。もっと、ざっくりわかりやすく言えば、これから発行するコイン買ってくれると将来こんなメリットあるかもよ?どう買わない?みたいな勧誘がされてるもの

*4:現在時価総額No2の仮想通貨。スマートコントラクトなどビットコインではできないような機能を搭載している。なお的にはかなり注目している。なのでこれもどこかでしっかりと特集する予定!

*5:コインチェックやビットフライヤーと同じやつです